パフューム


「パフュームある人殺しの物語」
http://perfume.gyao.jp/
18世紀のある天才香水の調合師の物語。

孤児で超人的な嗅覚を持った主人公の話。
初恋の女を殺してしまうが、その女の匂いを保存するために香水師に弟子入りする。
そこで沸騰させ、蒸留させる方法を学んだが、生き物の匂いは蒸留する事はできなかった。
匂いを違った方法で抽出するために、グラースという街へ旅立つのだが、
その旅路の途中で、自分に匂いがしない事を悟る。

匂いがしない、ということは「誰の記憶にも残らない」「世の中に存在しない」という事と同じであり、
彼は失意のまま、しかしながら最高の香水をつくり自分の存在を認めされるために
グラースに向う。
グラースで人間に油脂を塗り、そこから匂いを抽出する製法を体得した主人公は、
次々と街の女を殺害し、頭を刈り、女たちの匂いを抽出しまくった。
世界がひれ伏す香りをつくった彼は―

香水というのは、世にある万物の匂いの構成するコンポーネントをリミックスし、新しい匂いを
創りだすこと。

あるがままの匂い、がないことに気づいてしまったとき、ある女の「匂いを保存する」ことから
「自分の匂いがないことを埋めるため」に、自分という存在を証明するために香水を作ることに目的が変わってしまった。

そんな彼が起こしてしまった殺人は、非常に悲しい。
死刑台にあがったとき、完成した香水をばらまいて、刑罰を見物にきた民衆・法王が全員裸になって
愛し合うシーンがあるのだが、自分だけ満たされていない主人公。

香水というのは、嗅がせる対象がいて初めて意味をなす。
最高の香水を創りだすことで自分の存在証明をしようとした彼は匂いがない=存在しない。
天才が天才たらしめるものは、自己の圧倒的な欠乏から生まれるのか。
悲しい天才の話。